2010年9月21日火曜日

首都ローマ(Roma Capitale)

2010年9月19日、ローマが首都になってから140周年を記念する祝典が催された。「イタリアの兵士を象徴する」といわれるベルサリエーリ(羽根がたくさん付いた帽子を被り、走って行進する狙撃隊)がファンファーレを鳴らしながらピア門を走り抜けた。2011年1月9日まで、「Il Risorgimento a colori(絵画に見るイタリア統一運動):19世紀のローマ」展も開かれ、美術館や個人コレクションから集めた作品約100点を展示する。

一方、ローマ市(Comune di Roma)が新法で「首都ローマ(Roma Capitale)」となる日が近づいている。この法律により、イタリアの政府機関や各国大使館が集まるローマに、より相応しい機能と経済的基盤が保障されることになる。都市計画、公共事業、建築、交通、文化財、観光、防災などが、国と州(ラツィオ州)の管轄からRoma Capitaleに移譲され、Consiglio Comunale(市議会)はAssemblea Capitolina(首都議会)という名称に変わる。

2010年9月16日木曜日

ヴェネツィア写真展 榎本聖一


サルデーニャ島に10年滞在し、この島の独特な文明に魅せられて撮り続けた写真展(銀座のニコンサロン)に続き、榎本聖一のヴェネツィア写真展が開かれる。1971年の夏、学生時代に初めて訪れたヨーロッパの地。ヴェネツィアに降り立ったときの印象は強烈だった。色鮮やかな建物群、空、それらを抱くかのように漂う海。
今回のヴェネツィア写真展のメインテーマは「Nettezza Urbana街の清掃人」。1949年にミケランジェロ・アントニオーニが世に出した同名のドキュメンタリー映画に思いを馳せた。その他、フェニーチェ歌劇場の楽屋裏から搬出され、小船で倉庫まで運ばれるオペラの大道具や小道具、ゴンドラ、街角で見かけた無残にも悪戯書きされたマリア・カラス展のポスター、文化財修復活動支援企業の垂れ幕で周りを覆われシュールな風情のPonte dei Sospiri(溜め息の橋)、仮面を被る子供、など。

上の写真は、波止場を越えて吹きつける波。望遠レンズを一切使わない榎本はぎりぎりまで近づいて撮った。遠くにはRedentore(贖い主)教会が見える。

榎本聖一写真展 「ヴェネツィア」
2010年10月8日(金)~18日(月)
場所:コニカミノルタギャラリー
(新宿高野ビル4F)
TEL:3225-5001
http://konicaminolta.jp/plaza/
最寄駅:JR新宿駅東口
地下鉄丸の内線新宿駅A7出口

2010年9月15日水曜日

ピーコ・デッラ・ミランドラとポリツィアーノ(2)



                マルシリオ・フィチーノ

     ポリツィアーノとピーコが通ったカレッジのプラトン・アカデミー。

フィレンツェの郊外、カレッジのメディチ家別荘に集うAccademia Platonica(プラトン・アカデミー1460-70年頃)と名づけられたヒューマニストたちのサークルの中心的人物は、人文主義者マルシリオ・フィチーノと若いジョヴァンニ・ピーコだった。1453年のビザンチン帝国崩壊後、亡命者たちによってギリシャ哲学の原書がイタリアに大量にもたらされ、それらのコレクションとイタリア語への翻訳熱(それまではアラビア語からの翻訳が主流)が高まった。フィチーノはコジモ・デ・メディチの依頼を受け、カレッジのヴィラにこもってひたすらギリシャ古典の翻訳に携わり、1462年から68年のあいだにプラトンの全作品を翻訳した。この文化サークルに影響を受けた芸術家には、サンドロ・ボッティチェッリ、アントニオとピエーロ・デル・ポッライオーロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ペルジーノ、ルーカ・シニョレッリなどがいる。

ジョヴァンニ・ピーコ・デッラ・ミランドラとポリツィアーノの死因



ルネッサンスの申し子、Giovanni Pico della Mirandolaジョヴァンニ・ピーコ・デッラ・ミランドラ(1463-1494、人文主義者)と彼の友人で詩人のPolizianoポリツィアーノの死が毒殺(大量の砒素の投与)によるものだということが、サン・マルコ修道院の回廊に埋葬された二人の遺体の発掘調査によって明らかになった。殺人犯はロレンツォの息子で、陰険な性格だったピエーロ・デ・メディチかもしれないという憶説もある。
アラビア語、ヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語などに精通し、カバラ(ユダヤ教神秘主義思想、ヘブライ文字の数秘術)研究に熱中し、自然科学にも素養があり、超人的な暗記力をもっていた(ダンテの神曲を暗記し、逆さに暗誦することもできた)貴族出身の美青年ピーコ・デッラ・ミランドラは、その代表作でルネッサンスのマニフェストともいえる『De hominis dignitate人間の尊厳』を世に出し、ルネッサンスの知恵の一頂点に達した。90の命題からなる「人間の尊厳」では、人間の素晴らしさが高らかに歌われている。「人間よりも素晴らしい存在は見出せない」「人間とは偉大な奇跡」「生きとし生けるもののなかでもっとも幸せでもっとも称賛されるべき存在」と語るピーコにとって、人間こそはその豊かで自由な可能性を駆使し、神に近づくことができる宿命をもった存在であった。

2010年9月10日金曜日

三池監督の3作品がヴェネツィア国際映画祭に登場

第67回ヴェネツィア国際映画祭の9日目、「待ちに待った」と期待されていた三池崇史監督の新作、「ゼブラーマン2:ゼブラシティーの逆襲」が、前夜の「ゼブラーマン1(2004年度作)」に続き、『真夜中の上映』(0:30、大ホール)で紹介された。今回コンペティション部門に参加する同監督の「13人の刺客」を盛り上げるかたちで、「極限的で革新的な天才監督」としてヴェネツィア映画祭ではとくべつ人気の高い三池監督の3作品が同時に上映されることとなった。

2010年9月8日水曜日

第67回ヴェネツィア国際映画祭

(Mostra Internazionale d'Arte Cinematografica di Venezia)

カンヌ、ベルリン映画祭と並ぶ世界三大映画祭の一つであり、世界最古の歴史をもつ「ヴェネツィア国際映画祭」が9月1日(水)に開幕した。授賞式は最終日の11日夜(日本時間12日未明)に行なわれ、金獅子賞(Leone d'Oro)、銀獅子賞 (Leone d'Argento)、監督賞、審査員特別賞 (Premio Speciale della Giuria) などが授与される。
今回コンペティション部門に参加する日本映画は2本。「ノルウェイの森」(監督:トラン・アン・ユン、主演:松山ケンイチ)と「13人の刺客」(監督:三池崇史、主演:役所広司)。

イタリアからは次の4作品が参加する。
― La passione (パッション/情熱)(監督:Carlo Mazzacurati、主演:Silvio Orlando、 Cristiana Capotondi)
― Noi credevamo (我々は信じていた)(監督:Mario Martone、主演:Luigi Lo Cascio、Toni Servillo、Luca Zingaretti、Anna Bonaiuto)(150年前のイタリア統一の時代を描いた歴史映画。出演者は19世紀に使われていたことばを話す)
― La solitudine dei numeri primi (監督:Saverio Costanzo、主演:Luca Marinelli、 Alba Rohrwacher、Isabella Rossellini)
― La pecora nera(黒い羊) (監督:Ascanio Celestini、主演:Ascanio Celestini、Giorgio Tirabassi、Maya Sansa)

また、招待作品として、Vallanzasca. Gli angeli del male(ヴァッランツァスカ:悪の天使たち)(監督:Michele Placido)、"Omaggio a Vittorio Gassman" (ヴィットリオ・ガスマンへのオマージュ)(監督:Giancarlo Scarchilli)など19のイタリア映画が上映される。

最初に上映された、精神病に苦しむ人々を詩的なタッチで描いたLa pecora nera (黒い羊)は10分ものスタンディングオベーションを受けた。
ミケーレ・プラチド監督の、4つの終身刑と260年の禁固刑の判決を受けて現在も服役中のヴァッランツァスカの自伝に基づく「ヴァッランツァスカ:悪の天使たち」は、殺人、拉致、強盗、脱獄を続けた人物を主人公としているために論争の的となった。ミケーレ・プラチドは「国会にはもっと酷い罪を犯した人たちがいる」と言ってのける。

授与される賞は下記の通り:
― Leone d’Oro (金獅子賞)
     – al miglior film(最高作品賞)
     – alla carriera (功労賞)
― Leone d’Argento (銀獅子賞)
     –  Gran premio della giuria (審査員賞)
     – Premio speciale per la regia (監督賞)
― Coppa Volpi (ヴォルピ杯)
     – per la migliore interpretazione maschile (男優賞)
     – per la migliore interpretazione femminile (女優賞)
― Premio Osella (オゼッラ賞)
     – per la migliore sceneggiatura(脚本賞)
     – per il migliore contributo tecnico(技術貢献賞)
― Premio Marcello Mastroianni(新人賞)
― Premio Jaeger-LeCoultre Glory to the Filmmaker