CavalliそしてRoberta Mameli
バロック音楽のフロンティアの天才的開拓者クラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi 1567年~1643年)のオペラを聴くことは、バロック音楽ファンの最高の楽しみの一つだと思うのだが、いかんせん作品の数が少ない(『オルフェオ』、『ウリッセの帰還』、『ポッペアの戴冠』)のが悲しいところだ。
一方、そのモンテヴェルディの門下生で、1668年にヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の楽長に就任したフランチェスコ・カヴァッリ(Francesco Cavalli 1602年~76年)は、じつに33ものオペラ作品を残している。1980年代にルネ・ヤーコプスが『ジャゾーネ』、『セルセ』などを次々とレコーディングしたのを先駆けとして、近年、続々と蘇演やCD/DVD化が行われており、ヴィヴァルディに先立つヴェネツィア・オペラの大家としてのカヴァッリの実力の全貌がようやく明らかになろうとしている(それでも30歳年下のフランスの作曲家リュリのブームに比べればだいぶ遅れをとっているが)。
甘美な旋律美と躍動感にあふれたカヴァッリの音楽のすばらしさを味わうには、最高傑作との誉れの高い1657年初演のオペラ『アルテミジア(L'Artemisia)』のCD(3枚組、Glossaレーベル)をぜひ聴いていただきたい。プロットが複雑華麗すぎて登場人物に感情移入しづらいという難点はあるものの、次から次へと繰り出されるアリアの美しさはまさに圧巻。そして、そうしたカヴァッリ・オペラのすばらしさを、圧倒的な歌唱力と情感であますところなく表現していたのが、アルテミア役を歌ったロベルタ・マメリ。ロベルタ・インヴェルニッツィと並び、古楽界最高のイタリア人ソプラノとして日本でも人気の高い、もう一人のロベルタである。
昨年もモンテヴェルディ『ポッペアの戴冠』の日本公演でタイトルロールを歌い、観客に深い感動を与えたマメリだが、今年の来日公演のプログラム(9月27日東京、29日大阪)はピアソラ、ヴィラ=ロボス、グラナドス、ソル、モンポウなど、カタルーニャや南米の作曲家たちを中心にした「近現代物」。とはいえ、なにしろサックス奏者とのコラボでモンテヴェルディをジャズ・ピースとして歌い上げるという離れ業をやすやすとやりとげてしまうマメリのこと、心ゆさぶるパフォーマンスを披露してくれるであろうことは請け合いである。
ロベルタ・マメリ|ソング・コレクション |
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